ZRX1100＆1200でのRCMはこれまで数える程の台数しか製作されて来なかった。それはDAEGを 含めたとしてもである。このRCM-569は、シリアルナンバーが600番に近づこうとしている正にそんな 折、オーダーメイドで製作依頼を頂いたものだ。ベース車は既にオーナーが所有していたZRX1200で 車両お持ち込みでのRCM化である。モチーフとなったのは以前に製作されたRCM-528で、それを リスペクトした方向性のメニューで仕上げられている。

最初に視覚に映るのはシングルシートで、更に 外装ペイントもRCM-528のエッセンスを感じ取れる。一見同じに見えるが見比べると僅かに異なる デザインでのペイントである。かなり似た印象を感じるのはマスク回りがDAEGのものになっている点 も大きな要因だろう。そんなRCM-568、OHLINS製USD倒立フォークを用いたノーブレストのExM パッケージで強靭なフロント回りを構築。OHLINSサスに始まり、O・ZレーシングホイールとBrembo ブレーキキャリパーの採用はロードレース世界選手権で数多く見かけるマスト的な組み合わせだ。 ディスクローターもSUNSTAR製ワークスエキスパンドディスクと一切妥協のないメーカー選択である。

今回のRCM化においてはエンジンにも力が注がれた。ZZ‐R1200純正ピストンを用いてハイコンプ 仕様になったユニットはDAEG純正トランスミッションを流用して6速化。全分解をしているのだから オーバーホールも同時に施工。如何にメッキシリンダーと言えど、シリンダーヘッドのバルブ回りに おける密閉性能が低下していたら調子は上がらない。FCD材での製作バルブガイドで入れ替え後に シートカット加工を施してヘッドコンディションを完調に。クランクも多気筒エンジンにとって重要となる ダイナミックバランスを高い精度で追求。これら内燃機加工の全てをサンクチュアリーが誇る専用機関 ディンクスが担当。精密な仕上がりで遂行されている。

新車時プラスアルファで性能回帰したエンジンに ナイトロレーシング製ウェルドクラフト3Dチタンマフラーとヨシムラミクニ製TMR‐MJNキャブレターが 装備。トルクフルで伸びのある出力を実現している。主張あるカラーリングから強いカスタマイズ感を 見て取れるRCM-569だが、ストリートでの実用性にも優れており用途の幅は広いと言えるだろう。 ZRX1200と言う素材を活かしつつも特別な個性化を図ったマシンであり、オーダーメイドならではの 世界観がある。RCMの中でも希少となるZRX1200なだけに造り手にとっても記憶に残る1台である。