RCMクラフトマンシップはサンクチュアリーのスタッフ主導の元に製作され、作り置き販売されるRCMである。 運良く安価で購入できたベース車を基に、一部に新古パーツや状態良い中古パーツ等を用いる事で、通常の オーダーメイドRCMよりも抑えた価格で提供出来るのが一番の魅力であるが、近年は空冷Z系車両の枯渇から ベース車の入手が厳しくなり、同時に車両相場価格も高騰した事からRCMクラフトマンシップの製作が成り立た なくなって来ている。このRCM-527もそんな厳しい時期に製作された車両であったが、ベース車やパーツなど 諸々好条件が重なって製作が出来たマシンであった。

リーズナブルな価格が魅力のクラフトマンシップとは言え このRCM-527の仕様は決してベーシックなものではない。シャシーは基本となるサンクチュアリーオリジナル フレーム補強ST-Ⅱをかわきりに、ワイドレイダウン&ドライブチェーンラインオフセットインライン処理を施して 17インチホイール化。足回りには世界最高峰メーカーの逸品であるO・Zレーシングホイール、OHLINSサス、 Brembo製CNCブレーキキャリパー&ラジアルマスターシリンダーと、一切の妥協を許さない完全主義的な パーツ選択をしている。エンジンはオーバーホール中心のライフパッケージだが、完調である事を最優先にした 仕様である。とは言え、ナイトロレーシング製マフラー&TMR-MJNキャブレター、そしてASウオタニSPⅡとの 組み合わせでトルク&パワーは申し分ないスペックに仕上がっている。

街乗りだけでなくワインディグロードでの スポーツ性や高速でのクルージング走行など、あらゆるステージにおいて不満の無い運動性能を確保している。 スポーツバイクとしての動性能と空冷Zらしいビジュアルの両立を満たしている、そんな1台であると言えるだろう。 冒頭でも述べたが、空冷Zをベースにした新規製作でのクラフトマンシップ車両は年々成り立たなくなって来ており、 今後年間の製作台数は大きく減るであろうと予想をしている。それでもまだ完全に造れなくなった訳ではないから 成り立つのなら1台でも多く輩出して行きたい。このRCM-527を製作した時に感じたのは、手に入れた時の感動 大きな空冷Zをこれからも何とか製作し続けたいと言う、そんな思いであった。