世界中で枯渇が進むカワサキ空冷Z系車両だが意外にも日本にある個体数は多いと聞く。リッターエンジンの Z系車両は1970年代当時、日本では750㏄が上限排気量だった事から国内販売がされておらず、ほとんどが アメリカを中心とした海外市場に輸出されていた。だが1980年代のカスタムブームを機に大量のZ系車両が 日本へ逆輸入された事から日本に集まっている数が多いと言うのが実状である。2010年頃を境に海外にある Z系車両はその数を大きく減らし始め今では調達困難な状況になっているが、日本にある個体数は変わる事なく 存在しているから眠れるZ系車両は意外にも国内にあると言う事である。

このRCM‐523も元々はオーナーの 実兄が所有していたと言う車両で1980年代を連想させるカスタムが施されていたもの。長期不動車だったかと 思われる状態で、引き継いだオーナーの弟さんから車両をお預かりし、再生を兼ねてRCM化したZ1‐Rである。 車両お持ち込みでのRCM製作は実は年間を通して数多くあり、まずは車両の状態をチェックする所から始まる。 このZ1‐Rの場合、まずマフラーやキャブ、リアサスペンションやホイールなど装備されていたカスタムパーツに 相当な痛みが見られ、エンジンはかろうじて火が入ったものの大きく調子を崩している状態であった。フレーム にも複数の補強やリアサスレイダウン加工が施されていたが、それらも今となってはあまり良い加工仕上げでは なかった事から、フレーム&エンジン全てのセクションに手を入れる形で提案。RCMに相応しい仕様のコースで 造り込みレベルからスタートをした。新たにやり直しが敢行されたフレームは基本となるレーザー測定&修正から 着手。旧い補強材を切除してからの作業となり、ストレッチ後にサンクチュアリーオリジナルのフレーム補強ST‐Ⅱ を施工。リアサスレイダウンも専用治具を用いて高い左右精度の仕上げとなる。

エンジンは予想していた程悪い 状態ではなかったが、分解時にしか出来ないガンコート塗装を今やRCMの特殊塗装を全て担うレッドイーグルで 行い各部の精密内燃機加工をフルコースで施した。電装系も同様に今現在の規格品で新品に交換しキャブレター &マフラーも一新。足回りももちろん最新仕様の17インチシャシーで組み上げられている。相当数のパーツ交換と 加工のやり直しが施工されRCMとして新生を果たしたこのRCM‐523。以前の状態から見た目が変わったのは 当然であるが運動性能も以前と比べ物にならない走りを実現させている。それは何も高速やワインディングだけに 限らず低速走行する街乗り領域においても言える事で、ここぞと言う時に発揮するスポーツ性だけでなく扱い易さ をも同居させていると言う事だ。再生と共に進化もさせる。それらを同時期に行ったZ1‐Rである。