サンクチュアリーオリジナルフレーム補強STAGE-Ⅱを施され前後17インチホイール化されたシャシーは、 もはや空冷Z系RCMの定番とも言える仕様である。現代の高性能ラジアルタイヤを選んで履ける事は、 それだけでも大きなアドバンテージがあり、今のスーパースポーツ車とまでは言えないまでも、動性能は 飛躍的に向上するシャシーである。だが単に足回りを交換したと言うだけでは役不足で、17インチホイール を有効活用にするには車体姿勢、いわゆるディメンション構築の良否が問われる。適切な車体姿勢を保って 始めて17インチホイール化は良いシャシーへと至る訳である。ポイントはFフォークのオフセットとSアームの 長さ、そして前後サスの長さと性質にある。

17インチ化からタイヤ半径が小さくなる訳だから、足回り構成に より車高や姿勢を適切にしてやるのは必須だ。バランス良いシャシーに造り込んで17インチホイール化は 完成に至っている。そんな車体造りを施されたこのRCM-562、搭載したエンジンは耐久性に重点を置いた ライフパッケージ仕様である。スポーツ志向シャシーではあるが、チューニング度の強いエンジンとしなかった のは耐久性への配慮もさながら、マイルドなパワーフィールによる扱い易さ・乗り易さを求めたからでもある。 ラフなスロットル操作によるトルクの緩急やリアタイヤへの負担低減などはマシンを暴れさせない為の要素 でもあり、大人しいエンジン=ダメと言った単純な図式ではない。むしろフラットでマイルドな特製のパワー フィールが結果的に安定した走りに繋がる事もあるから、ここはオーナー好みで良い部分である。

もちろん 長く安心して乗り続けられると言うテーマも同時にクリアする訳だから、ライフパッケージは明確なコンセプトを 持ったスペックであると言える。作業の後半にトロコイドローター式ハイプレッシャーオイルポンプを追加して 健全なオイル循環のアップデートを測ったが、真夏や渋滞でのノロノロ運転の際にトロコイドオイルポンプは 油温上昇の抑制に大いに役立つもので、この辺りのパーツチョイスもオーナーのマシンに対する思いやりの 強さを感じさせられた。今や空冷Z系車両は個体数の激減から高嶺の花となっている。Zのオーナーになれる かどうかは極端に言えば早いもの勝ちかと言う状況である。更にはノーマルレストア派とカスタム派に分かれる 傾向にもあるが、いずれにしても入手するハードルが高い事に変わりはない。

RCMはカスタムとレストア、 そしてエンジンオーバーホールを同時進行で施して仕上げる車両である。50年も昔に生産された中古車を ベースとしているのだから中途半端なメニューではオーナーの期待に応える事ができない。徹底した作業を 費やしているのは今でもロードを元気に走って欲しいと言う想いがあるからで、このRCM-562も正にそんな コンセプトで造り込まれた1台である。