世界的に枯渇しているZ‐1をベースに製作されたこのRCM‐556。オーナーのコンセプトはイタリア車の色を 使った外装ペイントで、合わせて車体各部にオレンジを配色し更にカーボンパーツを組み合わせると言うもの。 最初のオーダー時から具体的なイメージを打ち出して製作されたマシンである。Z系ベース車の数が激減して 入手が難しくなった事から中古車相場価格は軒並み上昇。それは今も続いている現象だが、このRCM-556も そんな価格高騰が進む中でのオーダーであり、ベースとなったZ-1も以前より高額となっていた。にも関わらず オーナーのプランは一切妥協なき思想で、マシンスペックは非常にアップグレードな仕様にて製作されている。

足回りに目を向けても各パーツグレードの選択でコスト面への配慮はなく、世界を牽引する最高峰メーカーで あるイタリアBrembo製ブレーキ・OZレーシング製ホイール・OHLINS製サスペンションと、一流製品に拘った。 更にそれぞれメーカーのラインナップからも抜粋してチョイスされた旗艦モデルの逸品を用いており、そんな トップアイテムで固めた足回りは、サンクチュアリーオリジナルのフレーム補強ST-Ⅱで強化されたフレームに マッチング。17インチホイールのローリングシャシーとして適したバランスを追求している。エンジンはオーバー ホールに重点を置いたライフパッケージであるが、吸排気系&点火系パーツの効果もあって実用域における トルク&パワーに不満はない。むしろ扱いにくさ、気難しさと言ったネガな要素を最小限とするべく、あくまでも 公道車両として仕上げており、トロコイドローター式ハイプレッシャーオイルポンプの導入なども含め耐久性に 狙いを絞ったものである。

生産され50年もの年月が経過したZ‐1を今でも元気に走らせる。それも現代水準の 運動性能を求めるとなると、それは決して容易な事ではない。フレームの加工と強化、足回りのアライメントと ディメンション、最終的なマシンの仕上げなど造り込みとそのセットアップには特別なノウハウが必要となる。 ある種定例化された選択も必要であり、確認済みメニューを積極採用して行く事こそが優れたマシンを生み出す 重要な要素である。それらはローリングシャシーやエンジンと言った重要セクションにおいて最もその傾向を 示すが、外装カラーや各パーツの色などは変更しても問題とはならず、故にカラーコーディネートで個性化を 図るのは大変良いやり方である。そう言った見方からもこのRCM-556は堅実さの中に煌びやかさが存在して いる、そんなマシンである。