Z1000RⅡをベースに製作されたこのRCM‐533。キャンディライムグリーンの外装カラーリングが目を引く マシンである。製作の基本コンセプトは17インチシャシー化で、同時にフレーム補強とエンジンオーバーホール メニューを取り入れたものである。特筆すべき点は2つあり、一つはフレーム補強の手法である。従来からの 補強ではクランクケース後部のマウントカラーにパイプを溶接してフレームとカラーを一体化させる、オーソ ドックスなやり方であったが、このやり方だとパワーを掛けた際にどうしてもマウントボルトがしなって曲がって しまう。そこでRCMでは、ゼファー1100のリアエンジンマウントを参考にブラケットを直接クランクケースに 固定する手法を取った。

これによりマウントボルトも短くできて曲がる様な事はなくなった事から、ゼファーと 同じ手法のフレーム補強が定番化された。もう一つ特筆すべきはアッパーカウルのフレームマウント化である。 そもそもステアリング回りにビキニカウルを装備している車両はハンドリングに問題がある。Z1‐Rもそうだが、 旧車全般に多く見られる現象で、このビキニカウルをフレームマウント化しステアリングに何も取り付けない 手法は大変有効である。乗り比べれば誰でもすぐにわかるが、ステアリング回りに部品が取り付かないだけで これほどまでハンドリングが軽くなるのか、運動性能が良くなるのかは体感した者でなければわからないだろう。 軽快でシャープなステア特性を得たこのRCM-533は、現行ハイスペックラジアルタイヤを満喫出来る、前後 17インチホイール仕様。サスペンションやブレーキにおいてもバランス良くアップグレードされ、その走りは 1980年代初頭のバイクとは思えないフィーリングである。

旧車イコール旧車らしくではなく、今でも現行マシン 達とランデブー走行した時に劣る事のない走りが出来る事。このテーマこそはRCMに求められた要素であり、 それは今後も変わる事がない。Z1000RⅡはもとより、Z1000Jや1100GPなども中古車相場価格が軒並み 上昇してしまったが、旧車としての価値観ではなく運動性能を追求する事、その為に現代企画の高性能部品を ためらわず採用するオーナーの姿勢には共感できるものがあった。見た目の雰囲気ではなく、あくまでも走り 重視。今や多くの人達が失いつつあるストイックな思考で製作されたマシンである。