Z1000J/R系の最終モデルとなるZ1100GPを用いて製作されたRCMは、これまでも僅かな台数しか 存在していない。そんなGPを敢えてベースとし、このRCM－514は造られる。ローリングシャシーは 前後17インチワイドホイール仕様で、運動性能の向上に重点を置いたRCMらしいオーナー選択である。 Z1100GPもZ1000J/R同様、ラバーマウント固定式エンジンによる構造から激しい加速＆減速により エンジンそのものが前後方向に動こうとする。それによりリアエンジンマウントのケースボルトに応力が 集中して曲がって行き、結果エンジン搭載位置が後ろにずれてドライブチェーンの遊びが増えたり、最悪 クランクケースにクラックが入るなど何かとトラブルに繋がる事から、エンジンマウントを中心にフレーム 補強を施すのだが、そのフレーム補強は従来からの方式ではなく、ゼファー1100のエンジンマウントを 参考にした手法を採用。

ここ最近のJ/R系RCMには全てこの最新の補強を用いており、実際ロードを 走らせても今までの様にエンジンがずれてしまう事もなくなった為、補強の完成度は飛躍的に向上したと 言える。そんなフレームに17インチホイールを組み合わせたマシンだが、細部にはオーナー自らの拘り メニューも反映されている。オリジナルでパネルをワンオフして造られたメーター回りやローアングルに 加工されたナイトロメガホンマフラー、DAEG純正ヘッドライトに現行CB用LEDウインカーなど、外観上 すぐわかる部分はもちろん、シートの脱着ロックも現行バイクが多用しているシートストライカーを用いた システムにするなど隠れた部分に対する造り込みもオーナー拘りのメニューである。

外装はあくまでも Z-GPのイメージを踏襲するべく赤を主色でペイント。純正カラーそのままではなくキャンディカラーと グラデーションを採用したアレンジカラーである。エンジンはRCMライフパッケージコースでフルオーバー ホール主体の構成だが、オーバーサイズ化されたピストンはハイコンプ仕様で点火系と吸排気系パーツ のアップデートでトルク＆パワー共に充分なものに仕上がっている。せっかくオーバーホールしパワーも 上げたのだから潤滑系統への気配りも忘れてはいない。Zのノーマルギヤ式ポンプでは実現できない 根本性能が大きく異なるトロコイドローター式のハイプレッシャーオイルポンプに換装済みだ。

この様に 一見しただけでは判別できない部分にもオーナーは拘りのメニューを取り入れている。見た目の派手さや 遊び心を全く取り入れていない訳ではないが、チープな見た目のバイクにはしたくないとオーナーは はっきりした方向性を持っていたからある意味で進め易かったとも言える。特にRCMの場合、色使いの センスにおいてなるべく都会的な洗練さを大事にしているだけに、そこはオーナーと合意した部分でもある。 ハード面とソフト面、オーナーの趣旨がRCMのコンセプトにマッチしていた、そんなZ1100GPになったと 言えるだろう。