ベースとなる車両を手に入れる事自体が難しくなって久しい空冷Z系車両達。枯渇の兆候は既に2010年 頃から始まっていたが、ここ数年でそれは更に悪化し今では壊滅的と言っても過言ではない。1970年代 当時、主にアメリカやヨーロッパなどに輸出されていたZ系車両だったが、それら海外の車両が枯渇した事 が原因である。一方で今でもわずかながら輸入されて来ている個体もあり、それらの多くは高額で取り引き されている。Z1やZ1-Rもすっかり見かける事がなくなったがMK-Ⅱはいよいよ持って厳しい状況である。

このRCM-566をオーダーされたオーナーは、何とかMK-ⅡでRCMを製作したい、それもシングルシート 仕様のマシンをと切望。シングルシート仕様車はアルミのシートレールや各種ブラケットなどをワンオフする 必要性があり、造り込み工程が複雑で数が多い事からそこのコストが高額になりがちである。だが、海外から 輸入されて来たベース車の中にはフレームの後端部、いわゆるシートレールが切断されている個体もあり、 それらは相場価格よりも若干安く買える傾向がある。安いと言ってもわずかな価格差だが、シングルシート 仕様で製作するならシートレールを加工するのだから、そういうベース車を用いる事で増えたコストを抑える ケースはこれまでもあった。今回このRCM-566も正にそんなやり方で工夫をし実現させたマシンである。 とは言え、シートレール後端部がないベース車とは言っても決して安い価格と言えるほどではない。

現在の 相場価格からわずかに安いだけの事であるのだが、オーナーはカスタムメニューにおいても妥協する事なく、 高い水準のスペックを求めた。足回りはRCMに相応しきロードレース世界選手権で採用されているメーカー、 O・Zレーシング製ホイール、OHLINS製サスペンション、Brembo製ブレーキと、世界最高峰の逸品だけで 構成。高額パーツではあるがそれぞれ最も優れたメーカー製のアイテムで固めている。シングルシート回りを 取り付ける為の部品はサンクチュアリーの工場で内製されたワンオフもの。一見しただけではよく見えないが シングルシートを取り外せば手の込んだブラケット達が姿を現す。見ればそこだけでも如何に時間を費やして 製作されたかが伺えるだろう。ストリートでの使い勝手を考慮しシングルシートには小物入れも追加している。

カラーリングも含めて全てオーナーのイメージを具現化したRCM-566。MK-Ⅱと言う高額ベース車である にも拘わらず投入した時間と情熱はベース車価格を遥かに上回るもの。それでもこれだけのオーダーメイド マシンを自らのイメージで造れる事は趣深い行為である。もちろんよく走るマシンとして製作したのだから、 今度は走る事に喜びを感じて貰いたい。そんな想いを込めて造られたRCM-566である。