入手が厳しくなった空冷Z系車。中でもKZ1000MK‐Ⅱは近年めっきり見つからなくなった代表的機種で あると言える。そんな希少車であるMK‐Ⅱをベースに製作されたこのRCM－529は、前後輪を18インチ ホイール仕様で造られた。京都在住のオーナーは10年も前より「いつの日かRCMを」と計画されて来た方で 10年越しの夢をここに来て実現するに至る。10年前と比較して中古車相場価格が高騰した空冷Z系車両 だが「まだ何とかやれます」と造り手側も期待に応えるべく、ベース車探しから製作まで奮闘した車両である。

フロントフォークには通常φ38径のものを採用する事が多い18インチホイール車だが、このRCM－529 ではφ43径のゼファー1100純正をチョイス。フォーク長が800mmとZ系に適した長さを持っていた事も さながら、近年のネイキッド車両のサスは速度レンジの高い想定で設計されている事もあって、腰のある ストロークをしてくれる。急制動時においてもフォーク剛性がブレーキ性能に負ける事なく、しっかり感を もたらしてくれる為に意外にも良い働きをしてくれる。リアサスが社外製でスプリングバネレートが高い事 からもフロントが負け気味にならずバランス良いピッチングで動いてくれると言う訳だ。17インチホイール系 RCMに見られるOHLINSフォークも良いが、純正流用にする事で見た目も18インチに見合ったシックさを 演出してくれるから色々な意味でマッチングしていると言えるだろう。

フレームにはサンクチュアリーオリジ ナルのステージⅡ補強を施工。キャスター角がきつくなりすぎない様、リアサスレイダウン角度も17インチ シャシーより控え目に設定。SCULPTURE製の18インチ専用スイングアームもシャシー全体の剛性に 適したもので、スポーツバイクに必要なしなり、しなやかさを伴わせている事から、曲がり易さ・乗り易さを 向上させている車体である。17インチと18インチホイールではとにかく造りが異なるもので、車体姿勢を 始めシャシー剛性の味付けまで変えており、それはその車体の資質を理解した上でのコンセプトである。 思うに18インチホイール車の魅力は走りのステージ幅が広い事であり、乗り方に頼らないニュートラルな ハンドリングにあると思う。ここぞと言う時はスポーツバイクとしての瞬発力を発揮するが普段はチョイ乗りが 楽に出来るマシン。このRCM－529は正しくそんな仕上がりで製作されたRCMである。