カワサキの空冷2バルブエンジン車の中で最高出力を誇る空冷GPz1100。今や中古車相場価格が高騰して 入手が厳しい機種となっている。このRCM-582は、そんな空冷GPz1100をベースにRCMとして製作された 車両だがオーナーは特にオリジナルへの拘りなど微塵もなく、むしろ特別な自分仕様と言う方向性を選択された。

フレームには最低限の補強が施される。要所の補強は最低限だがエンジンマウント部の補強はサンクチュアリー オリジナルの現行式手法を採用。Z1000J以降のラバーマウント式エンジンはパワーのオン＆オフによる駆動の 入力からエンジンが前後に揺らされる。クランクケース前側のマウントがラバーマウントで、リジット固定されて いる後部マウントにしわ寄せが来るのだが、最も応力が集中してしまうのが後部上のマウントで、カラーを挟んで 長いボルトで固定して事からボルトがしなり易い。ノーマル車両でもここのボルトは大半の個体が曲がっており、 それに気付かず乗っているオーナーは意外にも多い。故にこのエンジンマウントを強化するのがフレーム補強の 重要なポイントで昔から行われているのがエンジンマウントカラーとフレームをパイプで繋いで溶接するやり方で ある。

だが、その補強でもエンジンは動いていまう。エンジンはどうしても動こうとしてしまうからマウントカラーは 固定されていてもボルトは曲がって行く。皮肉にも空冷Z系最強の出力を誇るGPzの場合、それは顕著に現れる。 サンクチュアリーでは同じラバーマウント式エンジンのゼファー1100に着眼。ゼファー1100同様、短いボルトで 後部マウントを固定すれば良いと言う発想である。フレーム側への加工は大掛かりとなるが、この補強を採用 した以降ボルトの曲がりは見られない。後期型モデルの構造は常に良い参考例になると言えるだろう。抜本的な 発想の違いから施された信頼あるフレームにはフルオーバーホールされたエンジンを搭載。ピストンサイズのみ 大きくなってはいるもののベストコンディション化に重点をおいたメニューで、精密な内燃機加工はディンクスが 担当。最新の電子制御ホーニングマシンを用いてシリンダークリアランスは4気筒バラつき無し。バルブガイドと シートリングの同軸性も精度が高く、これら内燃機加工の精密な仕上がりからエンジンの調子はすこぶる良好。

積極的なチューニングメニューを施さずとも十分満足できるパワフルなユニットへとコンディンションアップされて いる。足回りは18インチホイール仕様だが、フロントフォークやスイングアームなど17インチ専用アイテムを ハイブリッドさせて構築。寸法の相性や走行フィーリングなど特に違和感なく出来たのは以外にも勉強させられた 部分であった。要所、重要な項目をしっかり造り込み仕上げられた堅実性の高いGPz1100である。