パワーパッケージ
完調は維持したい。だが、それ以上に強烈な加速力と最高出力も手に入れたい。そんなリクエストに応えるコンセプトこそが「パワーパッケージ」仕様エンジン。本体の発熱量も増大するため、冷却系統機能(オイルクーラー)の装備はもちろん、キャブレターのセッティングや点火系の調整等においてナーバスな一面もありますが、力強く個性的なエンジンとなるためチューニング本来の醍醐味も大きく、より攻撃的な仕様のマシンとなります。
ピストン
磨耗し拡がってしまったピストンクリアランスを正規の数値に戻すというボーリングの意味合いはライフパッケージ同様。ここでは更にトルクと最高出力を追及するべく排気量とコンプレッションを上げる場合も多くあります。ピストンサイズもφ73~74といったオーバーサイズライナーをベースとしたボアサイズを選択する傾向が多くなります。
カムシャフト
あくまでストリートというステージで、扱い易さをスポイルさせないという観点からも、推奨するカムはレースオンリーではない特性の物になります。ハイリフトカム化に合わせ、インナーシムタペットの採用及びカムスプロケットの交換、またシリンダーヘッド側タペットホールの加工等、複数のメニューが加わります。
クランクシャフト
組立て式クランクにありがちな捩れ誤差を芯出し修正し、1/100レベルまで精度を追求します。SANCTUARYのエンジンメニューではクランクピンの溶接強化は基本的に施していません。クランクケース側ベアリングホルダーのクラック及びホールドピン回りの破損が見つかる事もあり、そのような場合ケースそのものが三次元に変形をおこしてクランク本体の回転にフリクションロスを発生させている場合が多く、これらを修正することは非常に難易度が高い為、当社ストックパーツの中からコンディション良好な物を選び出し、交換します。
クラッチ&ミッション
クラッチハウジングの一次伝達ギアスプリング交換リビルドと、クラッチプレート本体の交換をします。ミッションに関しては大半のパーツがメーカー欠品となっており、新品入手可能な物は新品に、入手不能なパーツに関しては当社ストックパーツの中からコンディション良好な物を選び出し、交換します。ミッション組み付け時においては、シフトドラム等の変速パーツ類の面取り研磨や、ミッションドッククリアランスにおけるシム調整など、個々のエンジンパーツ個体差を念入りに摺り合わせた上でセットアップを行います。
シリンダーヘッド
使用するシリンダーヘッド個々の状態に合わせて一つ一つオーバーサイズバルブガイドやシートリングを製作し交換するのはライフパッケージと同様。既製品はここでも一切使用しません。ハイリフトカム採用と合わせて効果的なのは、オーバーサイズバルブ化とポート研磨。ハイスペックなエンジンを造り出す上で有効なチューニングではありますが、使用するオーバーサイズバルブの材質は、製作前の打ち合わせの段階でご相談いただいた上で選択します。また、ポート研磨に関しても、いたずらに大径ポート化するのではなく、どの様な性格のエンジンに仕上げるかといったコンセプトを基に設定して行きます。
タイミングパーツ
Z系最大のウィークポイントでもあるカムチェーン。エンジン全分解時には確実に強化品に交換しておきたい部分。あわせてアイドラー、テンショナー等も新品に交換します。アイドラーは基本的に耐熱、耐油性に優れたゴムグロメットにて2ピース構造としてあるダンパーフローティングタイプを推奨しています。強化されたカムチェーンと高出力化されたエンジンによって大きくなった負荷や振動を最小限に吸収し、エンジンにダメージを与えない、純正同様の構造がSANCTUARY MECHANIC BRAND製タイミングパーツです。
塗装・表面処理
エンジンを丸ごとブラスト加工しペイントするのではなく、一度全分解された個々の鋳造部品を丁寧にマスキング処理し、サンドブラスト加工後、耐熱ペイント処理します。ペイント後は150℃以上の高温で釜焼きを施し塗装をより定着させ耐性を上げます。また、エンジン内部におけるオプションメニューとして、ミッションパーツやピストン等のWPCコーティングがあります。高温、高荷重にさらされる重要部位においては、摺動性向上と疲労強度向上が可能となり、パーツの使用年数値も上がります。シリンダーライナーボーリング後に施すパルフォスM処理(二硫化モリブデンショット)もピストンの初期なじみが良く、軽快なクランキングに貢献するなど、いずれの手法も有効なチューニングメニューと言えます。
各種対策部品
エンジンの発熱による鋳造品の熱膨張や、経年変化により伸びてしまう純正のシリンダースタッドボルトを、SCM(クロームモリブデン鋼)製のスタッドとヘッドナットに交換する事により、エンジン自体の歪みとガスケットのトルク抜けによるオイル漏れを防ぎます。オイルポンプはギア式の為、トロコイドローターの様な磨耗による圧力低下は発生しにくいものの、製造後30年近い年月を経過したパーツなだけに状態の悪い物に関しては後期型リリーフバルブ装備の新品ポンプにアッセンブリー交換をします。その他、バルブステム溝の深いバルブ及びコッターピンや、金属製のニュートラルスイッチ、アルミ製のシフトドラムローター等、各所にわたって見直された対策部品を採用しています。また、エンジンガスケットとO-リングに関しては、形状や厚み、材質等に問題のある社外製ガスケットSETを一切使用せず、純正品のみで組み上げる事で、信頼性のある高品質なエンジンを完成させています。