ライフパッケージ
やみくもに大排気量化するのではなく、あくまで長く完調を維持できる方向性を意識した仕様のエンジン。ノーマルに比べ出力アップすることにより、発熱等の内燃機特有の問題点が多少発生してくる為、最低限の対策パーツの採用を怠る事無く組み上げます。扱い易さと実用性に重点を置いており、主な排気量は1,015ccが最も多く、RCMではベーシック仕様エンジンとなっています。
ピストン
排気量を上げるという目的よりも、磨耗し拡がってしまったシリンダーとピストンのクリアランスを正規の状態に戻す為、オーバーサイズのピストンに変更すると言う意味合いが強くあります。純正オーバーサイズピストンはメーカー欠品が目立ってきたため、ワイセコ始めとする社外品のφ70~71を多く使用します。
カムシャフト
高出力化において要の一つとなるカムシャフトだけに、ハイカム化をしたくなる所ではありますが、ノーマルカムが持つ低・中速域における扱い易いトルク特性もストリートでは捨てがたい存在です。ライフパッケージではあくまでロングライフとコスト面に重点を置くため、ノーマルカムをそのまま使用する事は珍しくありません。アウターシム式のままセットアップします。
クランクシャフト
組立て式クランクにありがちな捩れ誤差を芯出し修正し、1/100レベルまで精度を追求します。SANCTUARYのエンジンメニューではクランクピンの溶接強化は基本的に施していません。クランクケース側ベアリングホルダーのクラック及びホールドピン回りの破損が見つかる事もあり、そのような場合ケースそのものが三次元に変形をおこしてクランク本体の回転にフリクションロスを発生させている場合が多く、これらを修正することは非常に難易度が高い為、当社ストックパーツの中からコンディション良好な物を選び出し、交換します。
クラッチ&ミッション
クラッチハウジングの一次伝達ギアスプリング交換リビルドと、クラッチプレート本体の交換をします。ミッションに関しては大半のパーツがメーカー欠品となっており、新品入手可能な物は新品に、入手不能なパーツに関しては当社ストックパーツの中からコンディション良好な物を選び出して交換します。ミッション組み付け時においては、シフトドラム等の変速パーツ類の面取り研磨や、ミッションドッククリアランスにおけるシム調整など、個々のエンジンパーツ個体差を念入りに摺り合わせた上でセットアップを行います。
シリンダーヘッド
4サイクル多気筒エンジンにおいて、シリンダーヘッドのコンディションは、エンジン特性に大きく影響を及ぼす部位なだけに精度とノウハウを追求した内燃機加工が必要となります。既製品のバルブガイドやシートリング等は一切使用せず、加工するシリンダーヘッド個々の状態にあわせてオーバーサイズガイドやシートリングを製作し交換して行きます。この様に市販品に頼らず、個々の状態にあわせて単品加工処理する事で、オイル下がりやコンプレッションリークといった後々のトラブルを防ぎます。
タイミングパーツ
Z系最大のウィークポイントでもあるカムチェーン。エンジン全分解時には確実に強化品に交換しておきたい部分。あわせてアイドラー、テンショナー等も新品に交換します。アイドラーは基本的に耐熱、耐油性に優れたゴムグロメットにて2ピース構造としてあるダンパーフローティングタイプを推奨しています。強化されたカムチェーンと高出力化されたエンジンによって大きくなった負荷や振動を最小限に吸収し、エンジンにダメージを与えない、純正同様の構造がSANCTUARY MECHANIC BRAND製タイミングパーツです。
塗装・表面処理
エンジンを丸ごとブラスト加工しペイントするのではなく、一度全分解された個々の鋳造部品を丁寧にマスキング処理し、サンドブラスト加工後、耐熱ペイント処理します。ペイント後は150℃以上の高温で釜焼きを施し塗装をより定着させ耐性を上げます。また、エンジン内部におけるオプションメニューとして、ミッションパーツやピストン等のWPCコーティングがあります。高温、高荷重にさらされる重要部位においては、摺動性向上と疲労強度向上が可能となり、パーツの使用年数値も上がります。シリンダーライナーボーリング後に施すパルフォスM処理(二硫化モリブデンショット)もピストンの初期なじみが良く、軽快なクランキングに貢献するなど、いずれの手法も有効なチューニングメニューと言えます。
各種対策部品
エンジンの発熱による鋳造品の熱膨張や、経年変化により伸びてしまう純正のシリンダースタッドボルトを、SCM(クロームモリブデン鋼)製のスタッドとヘッドナットに交換する事により、エンジン自体の歪みとガスケットのトルク抜けによるオイル漏れを防ぎます。オイルポンプはギア式の為、トロコイドローターの様な磨耗による圧力低下は発生しにくいものの、製造後30年近い年月を経過したパーツなだけに状態の悪い物に関しては後期型リリーフバルブ装備の新品ポンプにアッセンブリー交換をします。その他、バルブステム溝の深いバルブ及びコッターピンや、金属製のニュートラルスイッチ、アルミ製のシフトドラムローター等、各所にわたって見直された対策部品を採用しています。また、エンジンガスケットとOリングに関しては、形状や厚み、材質等に問題のある社外製ガスケットSETを一切使用せず、純正品のみで組み上げる事で、信頼性のある高品質なエンジンを完成させています。