ゼッケン39 最後の挑戦(その15)
タイトルにある 最後の挑戦・・・
時々だが「これが最後のレースなんですか?」と 聞かれる事がある。
「最後の挑戦」と 決めて臨んだレースだから、これを最後にと言う
想いは本当であり、2002年から始まった サンクチュアリー本店
歴代 Zレーサー 1号機 → 2号機 → New1号機の 空冷Zにおける
一連の活動に終止符を打つべき Zレーサー3号機が 空冷Zレーサー
最終走者である事に間違いはない。
空冷Zでのレースと言う点においてであるから 「じゃあ いつの日か
水冷マシンでやるんですか?」 と言う問いに対しても、現時点では
白紙と言うのが本音。
今は 空冷Zと言うキ-ワードに、全てがある事は確かである。
普段のブログで 相変わらずZ系RCMの問い合わせが切れない、と
お伝えしてますが、実際今年の1月から9月だけでも 20台以上の
Z系RCMオーダーが入っており、その半数の方が50歳以上・・・
皆さん何故か 口を揃えた様に語る
「10年経てば60歳すぎだし、その頃さすがに元気に乗れるか
自信がないから、今の内にやりたい事を実現するんだ」 と・・・
そんな言葉を耳にしすぎた訳ではないが、空冷Zでのレースは
これが最後なんだろうな・・・ と、感じていた。
時代背景を考えたなら、当然の事ながら ガソリンエンジンでの
レース自体が、今よりもっと衰退して行くだろうし・・・
近い将来、否応にも避ける事ができない そんな時代を直前に迎えて
これで やリ残した事はない・・・ 後悔もないと。
そんな想いを込めて名付けた、最後の挑戦と言うタイトルでした。
國川浩道とは、数年前に一度会った事がある・・・
イタリア O・Zレーシングホイールの総輸入元と言う立ち位置から
鈴鹿8時間耐久レースに絡んで、確か7~8年前に サポートしてる
某チームのライダーとしていたのを よく覚えていた。
実は彼 本来のゼッケンナンバーは〝92” なのだが・・・
サンクチュアリー本店レーシングチームで走る事が決まってからは
伝統のゼッケン〝39” をつけて走る事を、快く承諾してくれた。
そんな好青年である 國川浩道をライダーに迎え、延べ3度目となる
今回の練習走行で初めて 彼の焦燥感が表に出て来た。
イラついたかの如く 軽く火がついた様な印象で、最後の走行を
迎えた時、残された時間がない緊迫した状況に ついに隠していた
資質を見せている・・・
溢れんばかりの闘志を隠しているのが よくわかる乗り手なだけに
紳士に振る舞う好青年な彼ではなく、もう一つの彼の姿・・・
ベタな言い回しだが、野獣の様な彼本来の闘志を ほんの少しだけ
垣間見れたのだ。
むき出しの闘志
國川のそんな姿を目の当たりにし、まるで子供が楽しみにしていた
格闘技のタイトルマッチを見るかの如く、胸が高まってしまった。
いかん、いかん
彼の闘志に火をつけた原因が、そもそもレーサーのセットアップに
予想以上の遅れが出ている事なのだから、ここは喜んで良い所では
ないと すぐに反省。
この日はやっとサスまで辿り着けたのだから、成果もあったが・・・
未だ発展途上が続いている事に変わりはなく、至って厳しい状況に
希望的な進展は見えない。
何と言ってもエンジンを 計画していた仕様に持って行きたいのだが
これが予想以上に険しい道のりで・・・
スペアのノーマルシリンダーヘッドから脱却できないジレンマに
腹立たしさを感じていた。
車体のセットを進めなければならないから、攻めのセッティングに
持って行きたいのだが・・・
ツインプラグ化していない フルノーマルのシリンダーヘッドが故に
点火時期はこれでもかとばかり遅らせ、加えて燃調も空燃比ベースで
相当濃い状態にしてあるから、臨んだパワーには ほど遠かった。
PAMSの竹部さんも、居ても経ってもいられなかったのか
わざわざ時間を作ってまで アドバイスに駆けつけてくれる・・・
貴重な時間をさいて応援してくれる姿勢に、感謝の言葉もない。
様々な角度から検証したマップを、更に実走行で磨く・・・
メカニックの考えにライダーの感性が加わって 徐々に仕上がって
行くのだが、気がかりなのは ここまで時間と尽力を費やしても
結局今はノーマルシリンダーヘッドでの燃調だから 最後にはまた
大きく変わってしまうのではないかと言う、虚しさがあった。
よもやこの時点で、未だパワーユニットが決まっていないとは・・・
混走レースなのだから、水冷最速クラス ハーキュリーズマシンとの
勝負を意識する事はないのでは・・・ とも言われたが、見ている者に
とっては一緒に走っているのだから 空冷と水冷の 隔たりはないはず。
同じレースとして 見ているのだろうから。
だが そんな矢先、本番用のシリンダーヘッドに絶望する。
どこか 焦っているのだろう・・・
ダメだ・・・ 一つ止めても、また一つ 出て来る。
このヘッドへの執着を 捨てよう・・・
11月10の決勝まで25日程しかないが、新たに3個目のシリンダー
ヘッドを 今からでも用意すべきと判断。
それが間に合うかは、わからない。