師走も近づく、と ある日の午後・・ 畔柳・ツバサ・大地の 三名を集め、レース・ミーティングを
行った・・ 新生 Zレーサー1号機の 作業工程や 来年の レースウィークにおける 段取りなど
話し合うべき事項は 山ほどある・・。 この中で 唯一 経験をして来た 中村としては、どこから
説明を施し また 理解を してもらうべきか・・ 最初が肝心なだけに 試行錯誤 する所である・・。
まずは 何と言っても、ヒューマニズム性から・・ なのであろう と思う・・。 三名とも いわゆる
” ゆとり 世代 ” と 呼ばれる 若者である・・。 何もわざわざ 彼ら三名、その レッテルを貼った
見方だけで 判断している 訳ではないが、経験値の浅さ 故か・・ やはり脆弱な 印象なのだ・・
先日 開催された、筑波 ロードライダーフェスタ での デモランは、彼ら セカンド世代にとって
非常に良い経験になったと 考える・・。 言うなれば 練習試合・・ 公式 ではない場において
感じを掴む・・。 もちろん ライダー上田との 共演も 始めて と言う、貴重な経験となった・・。
コミュニケーション能力 こそが いかに強く・・ そして 結果に繋がるべく 最大の武器なのだと
教えてやりたい・・。 それは 結果的に レースを通じて、人生を 切り開いていく スキルをも
育められる事に 繋がるだろう・・。 真剣勝負の場からでしか 得られない 産物なのだから・・。
とにかくも、Z レーサー New 1号機 ・RCM-240 の フレーム完成を、急がなくては・・。
焦りは かくせない・・。 今年は 去年にも増して 忙しい年であった・・ 皆 日々の仕事に追われ
中々 思う様に 専念出来ずにいる・・。 その分、中村の作業量が 増えるのは 致し方ない・・。
リア・セクションから 完成させる為、専用の レイダウンマウントを 旋盤から 削り出した・・。
コンマ1~2mm程度の グリス溜まり溝を 彫った 特殊なマウント・・ 旧1号機の それよりも
2~3割は 軽く出来ている・・。 溶接前の 加工工程から、軽量化は 意識して行きたい所・・。
従来から使っている レイダウン冶具とは、異なるものを 使用して溶接・・。 マス集中化される
New1号機 では こう言った専用冶具も、日常 使用している物が 応用できないのである・・。
フレームに使用する STKM13C パイプ・・ 繋ぎ目のない いわゆる シームレス材を 選択・・。
丹念に溶接を 施して行く・・ ひとつ ひとつ・・ 全ての工程に 集中力を持って 望みたい所・・。
レースに のめり込んでいる時は、いつもそんな 心理状態になる事が多い・・ かつて あの頃も
いつも そうであった・・。 お客さん達の車輌を 待たせ続ける訳には いかないのだから・・。
ひとまず、リア・セクションの 完成である・・。 非常にコンパクトでそして、捩れに強いと 感じる
そんな 高剛性さすら 感じ取れる、頼もしい リア・セクションが 出来上がった・・。
この段階で、スイングアームの段取りも スタート・・。 使用する スイングアームは もちろん
” SCULPTURE製 RCM 専用 スペシャル ” ・・ アーム本体を 溶接で 組み上げて行く前に
きっちり 軽量化加工を 施す事にした・・。 手法は 至ってアナログ・・ ドリリング である・・。
構造的な強度は 犠牲にしたくない・・ おのずと肉抜きに 限界はあるが、それでも この段階の
単体重量で、片側 約100グラム近くは 軽く出来た・・ 小さな積み重ねへの 第一歩だ・・。
おもむろに置かれた エンジン・・ これは 2号機時代に、トレーニング用の エンジンとして
用意された、サイレント・タイミングチェーン の方だ・・。 後軸出力は 130馬力台の 後半・・
ここで 笹賀も語る・・ 中村 同様 「何かを伝えたい・・」 そんな風に 見えない事も ない・・。
かつては 猛威を奮った 笹賀・・。本年、眠れる獅子を 再び呼び起こそうと、努力を試みたが
残念ながら 獅子の覚醒には 至らなかった・・。 こうして セカンド世代の若手達に、細かな
ノウハウを 伝えてはいるものの、その眼に かつての熱さはない・・。宛ら 寂しい気持ちすら
覚えてしまう 程だ・・。 だが、これから始まる 挑戦に センチな感情は 禁物なのであろう・・。
新しい世代達は 自分達なりに、前の世代を 超えようと 懸命に戦っていた・・。 中村 自身が
そこを 肯定してやらねば、こいつらは 伸び悩むだろうし、特別な感情は 捨てるべきなのだ・・
むしろ・・ ひた向きで 純粋・・ 自我を捨て 初心で取り組む 姿 ・・。 脆弱、惰弱・・ そんな
見られ方を 覆そうと挑む その姿勢からは、何だか懐かしい感動を 思い出す事が出来た・・。
今は まだ・・ 力 少ない 彼らだが、いずれは 若獅子と呼ばれる・・
そんな日が・・ 来るのかも知れない・・。
その10に 続く・・