歓喜の瞬間は・・ 何の前ぶれもなく 訪れるもの・・
目指していた 頂に、到達した瞬間・・
59秒 913・・ 今日と言う日を 皆・・ 忘れる事は ないだろう・・
あの日・・ あの扉を 開けてから 始まった、 39の挑戦・・
無念の大破を 喫し、9年間 眠っていた Zレーサー1号機の 戦いが・・
ようやく 終わったのだ・・
ノーマルフレームベースの Z‐1で、筑波サーキットを 59秒台で 走り切る・・
ファースト世代達から セカンド世代達へ・・
延べ 12年間に渡る、Zレーサー1号機の・・ これが最後の 物語だ・・
2016年 5月11日
晴天に恵まれた、筑波サーキット・・
盛況 変わらぬ、テイストオブツクバ・・
日本最大の アマチュアレースと 言っても、 決して過言では ない・・
鍛えられし、 セカンドジェネレーションズ・・
もはや 迷いは見えない・・ メカニックとして 充分な逞しさを、身に付けた・・
そして・・
ライダー 上田隆仁も、到着・・
どうやら 思ったよりも 暑い一日に なりそうだ と、 懸念していた・・
スピードショップ イトウの 代表、伊藤晶雄が、早い時間帯にも 拘わらず
燃調を 気に掛けてくれている・・ 今日は一層、難しいだろう・・
初夏の陽気と 言うには、あまりにも 暑く・・ 燃調への影響は 大きい・・
ウォーミングアップエリアで、レスポンスを 確認・・
スロットルフィールだけで、エンジンの状態を 見れる様にも なった・・
上田は いつもの如く・・ 自分に 出来る事を やるだけ・・ と、
クレバーだが、 内に秘めたる 闘志が 充分に 伝わって来ていた・・
そして・・ 公式予選 開始・・
この日の上田は、時折 目を閉じ・・ 何かを 考えている事が 多かった・・
空冷Z・・ それも ノーマルフレーム ディメンションで、59秒台に 挑むと言う事
それがどれほど 厳しい壁かは、自身も 知る事であって
乗り手としての スキルは もちろん・・ 精神を 徹底して 研ぎ澄まさなければ
とうてい、届くものでは ないのかも知れない・・
クリアラップを 取るべく、ピットロードから 飛び出し
コースイン直後から、ハイペースで飛ばす 上田
1分0秒台 前半のラップが 連続するも、59秒台は まだ出てこない・・
それでも マシンの調子は、これまでの中では、一番良いように 見える・・
だが・・
いつもなら、タイヤ温存や エンジンへの 配慮で、短めに 切り上げて来るのに
何故か・・ この日の上田は、なかなか 帰って来ない・・
予選時間をも 目いっぱい 使い・・ まるで、何かを 探しているかの 如くだった・・
やがて 予選終了・・
ベストタイムは 1分0秒 183・・ 59秒台には 届かなかったものの
水冷最速 ハーキュリーズクラスとの 混走で、6番手グリッドを 確保・・
良い出足で あると 言えるだろう・・
いけるかも 知れない・・ と、 この時 そう 感じた・・