39の挑戦 Round‐3 その3
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Zレーサー NEW1号機を 積んで、一路、埼玉県を目指し 高速を移動・・
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下道に降り、閑静な工場街を 進んで行くと、見えてきたのは・・
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この日の目的地、埼玉県川口市に 在る、プロジェクトJAM である
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到着するなり、早速 代表の成毛氏 自らが、出迎えてくれた・・
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マシンの 最終仕上げを、プロジェクトJAMに 協力してもらうべく 来訪・・
代表の 成毛氏は、この手の調整に かなり精通した、頼もしい存在である。
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畔栁も、ダイナモ上での 調整が いかに重要な 工程か、身に染みて 知っている
成毛氏も、燃調や点火時期が いかに マシンの性能に 大きく影響を 及ぼすかを
軽視しない 人間であり、事実 その腕前で 数多くのマシンを 調律して来た・・
こう言った セッテイング工程は、実に地味で 日陰に入りがちだが、ストリート系の
カスタム中心で 生業を立てている ショップには ない、絶対的な物がある・・
いずれにしても、レーサーを通じて 開発や研究を 続けているのは、伊達ではない
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この日 たまたま 居合わせた、D;REXの 豊田選手・・
全日本ロードレース選手権は もちろん、 T・O ・T ハーキュリーズクラスでも
圧倒的な強さを 見せつける、常勝ライダーだ・・
そんな 豊田選手・・ どうやら このマシンの事を、気に掛けてくれている 模様・・
その心境は わからないが、嬉しい限りで ある事に、違いはない・・
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これまでも、数多くの人達に 応援を 受けて来た・・
だからこそ、何とか結果に 繋げたい・・ それはもう、中村だけでなく
畔栁とて 同じ想い・・ ノーマルフレームベースの 空冷Zで、筑波サーキットを
一周 59秒台で走る事・・ その為にも、上田にパワーを 与えてやりたいのだ
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この日、何回かの調整が 施され、最終的にマークした 最高出力は、131馬力
前回の 137馬力エンジンを、大きく下回る 結果になってしまったが、低圧縮な
エンジンに なってしまった 割には、何とか 伸びた方なのかも しれない・・
ひとまずは、何とか上田に 渡せそうだなと、安堵していた その時・・
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最後の測定を 試みていた、ダイナモ室から、妙な音が 聞こえた・・
この音は・・ あきらかに何か、異常が あった音・・
そう何度も 聞いている音では ないが、異常である事だけは、はっきりわかる
険しい表情の 成毛氏が、ダイナモ室から 出て来て、マシンを降ろした・・
再始動を 試みるが、不発・・
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調整中に 不具合が見られた、クラッチ回りを チェックするも・・
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別段、大きな問題は 確認できず・・
まさか エンジンブロー?・・ いやな予感が 脳裏をよぎった・・
こうなってしまっては、もう 調整も へったくれもない・・
Zレーサー1号機を 積み込み、早々に サンクチュアリーに 戻らねば・・
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成毛氏と、スタッフの深井氏に 別れを告げ、急遽 急ぎで反転・・
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早く戻り、エンジンを 分解しなければと、焦燥感 隠せない 畔柳・・
それもそのはず・・ 2日後に シェイクダウンを、控えているのだから・・
また・・ じゎっとした あの 嫌な想いが・・ 胸を よぎっていた・・
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ギリギリ、陽が落ちる前に 到着・・
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早速分解を してみると、 そこには見慣れない 光景が あった・・
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2番4番の シリンダーが 上死点にあり、1番3番が 下死点にある・・?
空冷Zに限らず、オーソドックスな インライン4 エンジンの事を ほんの少しでも
知っている者なら、これがいかに 異常な状態で あるか、すぐに わかるはず・・
ちなみに中村も・・ これは初めて 見た光景・・
この場にいた者 皆が、 あぁ~・・ っと、うなだれた・・
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もう、笑うしかない・・ こんな事、 実際に 起こるとは・・
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クランクシャフトが、真っ二つに 折れていたのだ・・
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はっきりした原因は 不明・・ だが 調べて見ると、前例があった・・
なるほど、金属疲労が 起こっていた事は 当然であろうが、出力アップを果たした
エンジンに 起こり得る、症状な様である・・
何にせよ、貴重な練習走行・・ それも 最初のシェイクダウンを 2日後に 控えた
直前での 出来事だった・・