レースより ストリートの方が過酷だと・・・
先日そんな話があると、耳にした。
なるほど渋滞に 長時間の高速クルージング、エトセトラ・・・
もちろん、ストリートにおける悪条件とて 充分理解しているが
レースよりストリートの方が過酷?・・・
・・・・・・・・・・・・。
そんな訳は ないだろう。
例えば 筑波サーキットのコース2000。
一周 1分を切る様なラップで 国際ライダーが真剣に勝負をしたなら
マシンに掛かる負担は、ストリートで起こる ものの比ではない・・・
スロットルはワイヤーも張ち切れんばかりにと、ワイドオープン。
常時全開口キープされたキャブレターは 速流化した外気を強吸・・・
シフトアップし続け グングン車速が載った直後にフルブレーキング。
φ43の高剛性フロントフォークは 底付き寸前までフルストローク!
入り切ったインナーチューブは弓なりに 大きく車体側へしなって
ステムやフレームには想像以上の高負荷が掛かり、車体はきしむ・・・
激しいコーナリングで左右に深くロールする中、前後のタイヤは
はじまでツブされ、そんな状態にも関わらずタコメーターの指針は
常に高回転域をキープされたまま 尚も突っ込んで行く・・・
空冷エンジンなら油温計で 130°超え あたり前。
ストリートの様に回転数を抑え目にして走る配慮など 一切できず。
オーバーヒートの臨界点を超えていても、容赦なく ブン回す・・・
ここまでマシンに負担かける事は、ストリートでは起こり得ない。
そして そんなストリートとは比べ物にならぬ過酷さだからこそ
今だに多くのメーカーがレースをテストの場とし、開発に繋げる。
より厳しく激しい環境でテストしてこそ 意義のある行為なのだから
レースよりストリートの方が過酷とは、一体 如何なる見方なのかと
疑わざる得ない・・・
レースに情熱ささげる者なら、皆 そう思うだろう。
國川浩道は言った。
空冷エンジンにはマイレージがないから レースでは本当に厳しいと。
彼がサンクチュアリーにやって来たのは、今年の3月も 半ば頃。
国際ライダー 國川浩道。
オリジナルフレームに空冷Zのチューニングエンジンを搭載した
チーム イエローコーンの HAM STEAK-Ⅱで、見事 58秒4と言う
驚愕のコースレコードを叩き出したライダーである。
今まで39番のZレーサーに乗って来た上田隆仁が、今年から自身の
チームを立ち上げ ハーキュリーズクラスに参戦する事になったのだが
そんな折、ある筋から話があって 國川浩道はやって来た・・・
初めて見る A16R Zレーサー3号機。
まだ骨格段階ではあるが、実際にまたがって貰い フィーリングを
確認してもらう・・・
シングルシート座面の位置とステップ、そしてタンクの形状など
一瞬たりとも気を抜かずに全力疾走し続けるレースでは、まさに
刹那の瞬間、本能的に感じたレベルの違和感ですらタイムに大きく
影響するから ライダーにとってマシンのポジションは重要な要素。
お構いなしでマシンに身を被せるから、タンクのニーグリップ部
エッジラインは なるべく痛みを憶えないものが望ましい・・・
すなわちタンク形状が マシンの操縦性に大きく影響を及ぼす訳で
今この段階で既に いくつかの修正テーマが決まる。
ライダーが ひたすらレースに没頭できるマシンに仕上げる事・・・
見方を変えれば この辺りはストリートも同じで、如何に乗り手と
メカニックとの人間関係の中で マシンを最適に仕上げられるか・・・
この点だけはレースもストリートも 同じであると言えるだろう。
やがて 國川浩道は
どんなレースであろうと やるからには命を懸けて走ると語り・・・
同時に、限界走行を強いられた空冷エンジンの 故障リスクと言う
ものが 如何に深刻であるかを懸念しており・・・
レースが想像以上に過酷で厳しい世界である事かを 辛辣に語った。
A16R Zレーサー3号機で、空冷最強・最速 スーパーモンスター
エヴォリューションクラスに臨む 國川浩道・・・
しかしながらマシンの製作は まだまだ途上にあり、残念ながら
この5月の大会には間に合わず。
最後に彼は 強く・・・
「間に合うなら 走りたい・・・ 走りたいです!」
屈託のない 熱意あるライダーがすぐ横にいて、期待に応える事が
出来なかった事に、いささか胸の痛みを覚える・・・
間に合わせる事が出来ないとは、全くもって 不甲斐ない・・・
そんな情けない気持ちになりながらも、一方で
メラメラと、新たな闘志も湧きおこった。
11月の大会目指し 今年の初夏には3号機をシェイクダウンさせる!
過酷さ極まりない、レースと言う極限での走りでも 耐えうるマシンに
仕上げて、ゼッケン39最後の挑戦に 相応しいレースとして臨もう。
最強・最速のプライドを掛けて。