2019年 11月10日 テイストオブツクバ
水冷ハーキュリーズ & 空冷スーパーモンスターエヴォリューション
2クラス混走での予選が始まった。
序盤からハイペース走行する 各エントリーライダー達。
1周目からキリキリする様な速度で 見る者を圧倒。
水冷最速クラス ハーキュリーズマシンが本気で走る中、空冷Zの
エンジンで挑む國川の全力走行を 始めて垣間見た瞬間でもある。
やはり水冷マシンと 空冷マシンでは、その走り方に大きな違いが
あると、改めて感じた瞬間でもあった。
最高出力190馬力の水冷勢に対し、147馬力の空冷Zエンジンは
非力と言わざる得ない・・・
ましてやハーキュリーズクラスは ライダーも凄腕の猛者ばかり。
本当に対等に戦えるものか、ただひたすら緊張するばかりだった。
3周目に入った所だったろうか。
何か・・・ 國川がおかしい
あきらかにマシンが減速した?
やはり 何か起きている!
会場がざわめく中、第1ヘアピン横の通路からパドックへ
エスケイプしようとする 國川とZレーサー3号機・・・
応援でパドックにいた RCMオーナーズクラブの田中吾希人から
電話が入り、この状況が伝えられると。
誠太郎は迷わず、一目散に走り出した!
懸命にピットロードまで戻ろうとする 國川浩道。
残された時間はわずかだが、まだ予選を2周しか回っていない。
何とか走らなければ・・・
このままでは決勝に並べないかも知れないと言う 危機感があった。
一体何が起こったのか 全くわからなかったが・・・
この時 この場にいた誰しもが、 もうダメだと感じていた。
誠太郎が3号機を押して ピットに帰還!
「早くっ!」と言う掛け声が 周辺に響き渡る。
まだ あきらめていなかった。
原因はやはり、昨日の特別スポーツ走行の時から調子が悪かった
何と、クラッチワイヤー・・・
いや正確には、クラッチのリリーストラブルが原因であった。
予選時間は残す所 あと数分だが、まだある!
クラッチリリースを組み直し ピットロードからコースイン。
國川も 絶対にあきらめていないと言う走りを見せるが、一周で
すぐにチェッカーが降られ 予選終了。
結果はと言うと・・・
幸いにも2周目のラップが無事に計測されており、予選を通過した
結果に 皆一斉に胸を撫でおろす・・・
が、一方でタイムは 走行2周目にして59秒052と言う 見事な
タイムを叩き出しており、3番手グリッドを確保していた。
となれば、何とかクラッチリリースを直して 決勝に臨みたい。
タイヤローテーションチームと二手に分かれ、早速取り掛かった。
元々油圧クラッチだった所に ワイヤー式リリースを取り付けている。
そもそも何故、ワイヤー化をしたのか・・・
少し前のセットアップ走行時、減圧コントロールバルブを取り付けて
走行していたのだが、あまりにもエンブレが効かなすぎる・・・
もう少し効いた方が良いとの事でバルブを外すが、今度はエンブレの
影響で コーナー進入時にリアスライドが起こり易くなってしまった。
リアスライドそのものは國川にとって何の事はないが、スライドが
収まるまでのインターバル中に アクセルオンする事が出来ず、結果
必然的にタイムロスが生まれ 立ち上がりがの遅れに繋がっていた。
そこで國川は コントロール感を掴み易いワイヤークラッチ式に変え
スライド中に半クラッチ操作を駆使して 上手くトルクを抜いてやり
エンブレが起因となっているリアスライドを 掌握する走法を選択。
実際そんな事が出来るものなのか ピンと来なかったが、國川浩道と
言うライダーはそれを いとも簡単にやってのけた。
リアスライドをコントロールし脱出を速める事が出来れば、空冷Zの
パワーでも水冷エンジンに対し コーナーでアドバンテージを奪える!
空冷2バルブエンジン車で 最強ハーキュリーズマシン達と戦うには
特別な走り方をする必要がある事を 國川が一番 知っていたのである。
PAMSの竹部さんが 気になって駆けつけて来た・・・
症状はリリースが本来止まる位置を超え 空回りしてしまう事だが。
ワイヤーを引く作用角に やや問題ある事がわかった。
また操作を軽くする為に レバーの長い社外リリースにしていた事で
回転がオーバーしていた事も判明。
ラッシュのカッパさんこと 清水さんが
「重くなるけどノーマルリリースの方がいい! ノーマルに戻して
プッシュロッドとの距離をベストな関係にしてやれば 直る!」 と
アドバイス。
そして これを見ていたスピードショップイトウのアキオが、何と
持ち合わせていたと言うノーマルリリースを貸してくれる事に・・・
皆 空冷エンジンに魅せられた、名うてのチューナー達・・・
まさに “チーム空冷”の 結束を見た様に感じた。
クラッチの対策完了!
最後のマップ調整も よし!
そして
どうやら TOT最強・最速クラス、決勝の時間が来たようだ。
サンクチュアリー本店レーシングチームは 既に、満身創痍・・・
ここまで来るのに もはやボロボロと言うのが、適切な表現であった。
このレースを始めるにあたり、よもやここまで多くのダメージを
生むとは、当初 思いもしなかった事だったが・・・
それでも
それでもここに 辿り着いた。
随分苦しく、長い旅路だった様に 思う・・・
果たして空冷が水冷に、実際 どこまで食らいつけるものなのか。
最強・最速
いや!
最恐・最速のマシンと男達の誇りを掛けた戦いが 今、始まる!