シリンダーヘッド、プラグホール中2気筒からの 圧縮リークが直せず
急遽、スペアで所有していたGPz1100のノーマルシリンダーヘッドを
引っ張り出して、バルブシートカットだけ施し 積載したZレーサーⅢ。
ノーマルヘッドであろうと 何であろうと、とにかく走らせない事には
始まらないから、選んでいられる余地はない。
やがて 数日後・・・
9月11日、 早朝の筑波サーキット。
前回のシェイクダウンが ほとんど走れなかっただけに、2度目となる
この日の走行だけは 外せない・・・
予報は午後から悪くなると言っていたが、午前中は行けそうである。
あとはマシンだけだが・・・
全くと言って良いほど 予定していたエンジンと異なるスペックに
いささか悔しい面持ちでいたが、初めて見る ZレーサーⅢの走りが
これから始まるのかと思うと、むしろ 気持ちは高揚していた。
サンクチュアリー本店レ-シング 真サード世代・・・
彼らもこの日の走行を心待ちにして来ており、昨晩からの疲れが
溜まってはいるはずだが この後始まる一本目に向けて余念がない。
そして、今日を一番 待ち望んでいた男・・・
ライダー國川浩道の顔には 笑顔が見えた。
これから取り組む課題の量に 臆する訳でもなく、先ずは走れる
事への喜び あふれんばかりにと、奔走たるフットワークである。
國川浩道が信頼をよせる 江尻氏も加わり、ミーティング開始。
何の成果もなかった前回とは違って、今日は沢山の手ごたえが
得られるはずであるから、全員の胸に意気込みが在った・・・
ZレーサーⅢ サスペンション担当、セイクレッド・グランドの
新保氏も登場・・・
自らの分野におけるセットアップで マシンの熟成を進めようと
モチベーションは高い。
この日は サンクチュアリーレッドイーグルの裕也が都合つかず
来れなかったが、一先ずこれにて 本日の役者はそろい踏みした。
午前8時。
一本目の走行に向け、國川の集中力も高まり出す。
コースコンディションは かろうじてドライと言った所だが、十分
走行ができる状態・・・
いよいよZレーサー3号機、これが 事実上のシェイクダウンだ!
まだまだ序の口だから 当然アタックなど出来る段階ではないが
きれいに全気筒 燃焼してるエキゾーストノイズが聞こえて来る。
よしっ! 行けるっ!
タイヤを温めながら 徐々にペースアップして行く3号機の走りが
ひとまず問題ない事を確認し 「まず ここまでは良し!」と、胸を
撫でおろす 真サード世代・・・
國川浩道は 国際ライダーである。
Zレーサー3号機は、A16のオリジナルフレーム 1R9Sで
シャシー構成されたマシンであり、コース上での本格的な車体の
セットアップはこれが初の試みであって、セオリーがない・・・
セオリーがないと言う事は 全く白紙の車体であって、前例がない
所から 仕上げて行かねばならないと言う事・・・
すなわちこのプロセスは、A16と言うマシンを 国際ライダーが
初めて本格的にセットアップする 初の事例になった事でもあった。
予想していたよりも しばらく周回を重ね、最初のピットイン。
原則としてタイヤウォーマーを巻き、毎回必ずエアーをチェック。
ここまでは打合せ通りで 問題なしだが、マシンはと言うと・・・
どうやら幾つか気になる点がある中で、まず最初に取り組むべき
課題を2つに絞り 改善して行くようである。
一つ目は何と言っても フューエルインジェクション燃調マップで
ここが目立った課題として 声が上がった・・・
ピットでのマップ調整は キャブレターのそれとは全く異なるもの。
ここでいきなり問題となったのがPCの立ち上がり時間で、容量が
重いのか、予想以上のタイムロスが起こる。
もう一つは最終減速比、ファイナルのセットだ。
コースのインフィールドにおいて各コーナー間を絶妙なエンジン
回転のまま繋いで行く事こそが タイム縮小要因のひとつである。
現状ではショートセット、すなわちすぐに吹け切ってしまうから
感覚的にシフトアップが一つ よけいに必要な状態であり、しかも
吹け切ってシフトアップした直後に すぐブレーキングとなるから
タイミングが合わないままにアプローチしている状況で、それも
かなり酷いレベルの状態であった。
このファイナルのセットと インジェクション燃調マップ調整が
この後大きく ピットワークのタイムロスへと綱がって行くのだが
シェイクダウン走行と言うのは むしろ、この様なものであると
クルー達を含め、國川浩道自身も 始めからわかり切っていた。
この日、残す走行枠は あと2本。
11月10日の決勝まで約2ヵ月しかない中、果たしてどこまで
詰める事ができるのか・・・
(その13)に続く